《PRECIOUS》


 今度こそ…守ってみせる。私の全てを尽くして。
たとえ、この身砕けようとも…。
 そう思える程の相手がやっと見つかった…筈、なのに。
それなのに『貴方』は、私に『違う』と言うの?



「…違う?」
 私は正直、彼が何を言っているのかを瞬時には理解できなかった。
何故、いけないのだろう。自分が大好きな、大切な相手を
自ら身体を張って護るという事が。だが、彼はそれを拒むというのだ。

「何がいけないの? 私は自分で祐一さんや舞を守りたいという、
願いを持っているだけなんですよ?」
 一弥の…守ってあげられなかった大事な弟の時と、同じ過ちを
繰り返さないように。二度と大切なものを喪いたくないから。

「その為だったら…」
「私なんか、どうなってもいい、と?」
私の言葉は祐一さんに遮られ、続ける事ができなかった。
「そう…です」
「そこなんだよ、俺が違うというのは。俺はね、舞もだと思うけど
佐祐理さんに身代わりになってもらってまで守ってもらおうとは思ってないよ」
「そこまでおこがましく思っていません」
「そうかな?佐祐理さんは自分のことを軽く考えすぎている。もうちょっと
佐祐理さんを大切だと思っている連中のことを考えてほしいものだね」
「私を…?」
私の事なんて…誰も…

「いるよ?例えば…この俺、とか」
「…はぃ?」
私は、思わず祐一さんを見返した。
優しい彼の瞳…誠心誠意の色。

「佐祐理は普通の子よりちょっと頭の悪い、ただの女の子ですよ」
自嘲気味に視線を落とした私に彼は“くすっ”と笑って言った。
「こういう時、自虐的に自らを卑下するのは佐祐理さんの悪いくせだよ」
「だって、本当に…!!」
…でも、心のどこかで『誰か』に、

「…たとえ、本当にそう思ったとしても、」
彼の次の言葉を待つ。『それ』を否定してくれる言葉を。
「俺はそれを含めて全部好きなんだから、問題はないさ」
「祐一さん…。私…!」
気持ちが一杯になって上手く言葉が出てこない。
「祐一さんは佐祐理を買かぶっています。きっと幻滅しますよ」

 そう言った私に彼は『まったく、もう』と呟きながら近づき、
私をやさしく抱きしめた。
「俺は…佐祐理さんのことが大好きだから、そんなこと思ってないよ。
ただ…佐祐理さんがつらそうにしているのが、絶えられないんだ」
「祐一さん…!!」
そんな彼の優しさに、自然と涙が溢れてきた。
「ありがとう、祐一さん」
顔を上げると祐一さんは優しく微笑んでいた。

「私、もし大切な人がいなくなったら、どうすればいいか
わからなかったんです。…でも、これからは自分の気持ちを
正直にぶつけてみます」
「そっか。…よかった、何だか吹っ切れたみたいだね?」
「はい!」
私は笑顔でうなずいた。



 過去を忘れるのではなく受け入れ、共に生きていこう。
いつか、自分自身が後悔しないように。
 今の私には大切だと思い合える人がいる。
そのことに何よりの喜びを感じていた。



   −END−