《とっておきの内緒》
柳也を夜中に叩き起こしての、神奈の『お手玉芸披露会』の翌朝。
神奈は早速次の目標を補足していた。
とはいえ、そちらは昨晩の柳也達を泣いて羨ましがっていたくらいなので、望むところのようだったが。
裏葉も昨夜こっそり見ていたとはいえ、間近に上達振りを見せられ感心しきりだった。
柳也と違い裏葉には率直に誉められ、裏葉にもまた見てもらう約束を取り付けた神奈だったが、やはり満足はしていないようだった。
もっともっと上手になりたいと、改めて神奈は口にした。
柳也はふと聞いてみた。
そんなにまで、何故練習しつづけるのか、と。
裏葉も聞きたがったが、神奈は悪戯っぽく微笑んで秘密じゃ、と言った。
一応、型通り裏葉は神奈に秘密を持たれたと泣いて嘆いてみせた。
が、神奈に教えてもらえなくても、その様子で大人の二人にはわかった。
母親に会った時に御披露するつもりなのだろう、と。
やはり子供、上手く出来たと頭を撫でて、誉めてもらいたいのだろう。
そんな神奈はとても微笑ましかったのだが、彼女の方は柳也達に秘密を持ったという事に罪悪感を感じたのかもしれない。
程なく、自分から話し始めた。
『とっておきの内緒』じゃ、と神奈は切り出した。
母上に会ったら、見せて差し上げたいのじゃ。
裏葉が教えてくれた。
余のことを思っていてくれていると。
きっと心配していると。
余が上手にやって見せれば、楽しんで頂けたなら。
安堵して下さると思う。
だから心配などしなくても良かったんだと、安心させて差し上げたいのじゃ。
なにしろ余には、自慢のそなたらがいるからな。
柳也どのがいかにすぐれた士(もののふ)か。
裏葉がいかに、色々なことを教えてくれたか。
余の事を常に気にかけてくれる、大切な二人のことを。
楽しみよの、と神奈は笑って見せる。
もったいないお言葉と、裏葉は恐縮してみせたが、その顔はとても嬉しそうだった。
その様子を想像し、目の前の二人につられ柳也の顔にも笑みが浮かんでいた。
そうだ。
そんな光景が現実のものとなるよう、自分達は全力を尽くそう。
期せずして柳也と裏葉は同時に考えていた。
それこそがこの旅の目的であり、
その時の神奈の笑顔こそが、柳也達にとって最高の褒美になると思われた。
<了>