『一緒にいたい』
「……さよなら、佐祐理。もう会えない」
驚いて私は振り返った。
「えっ……ちょ、ちょっと待ってよ、舞!」
意を決して立ち去ろうとする舞を、慌てて引き止める。
「どうして? ねぇ、理由ぐらい聞かせてくださいっ」
食い下がる私に、舞は後ろも振り向かずに言った。
「……私が一緒にいると、佐祐理に迷惑をかける」
「真夜中に学校でガラスを割った件?」
「……生徒会で、私をかばって孤立した、と聞いた」
「そんなこと」
私はうつむいた。
親友が傷つけられるよりも、自分が傷ついたほうが、いい。
そう思っているのだろう。いかにも舞らしい、極端な行動だった。
不器用な優しさ。胸が熱くなる。
「……私に二度と近づかないで」
嫌だ。今、ここで別れるわけにはいかない。
そうしてしまえば、舞は本当にいなくなってしまう。
私は、彼女の手をつかんだ。
「そうすれば、舞の方は気が済むかもしれない」
「……」
舞は、無言で手を振り払った。
「だけど、後に残された人の気持ちは、どうなるの?」
短いにらみ合いの後、舞は目をそらした。
「どうしても行ってしまうのなら、もう止めない」
再び歩き出そうとする舞。
「でもねっ、佐祐理は舞と一緒にいたい!
佐祐理はダメな女の子だけれど。それでも、放っておけないの!
舞のことが大好きだからっ……二人で一緒にいたいっ」
舞の足が止まる。
「……ありがとう」
舞は半身で振り返った。
「本当は、私も一緒にいたい。佐祐理のこと、嫌いじゃないから」
「佐祐理が、絶対に何とかしてみせます」
私は舞の代わりに事件の責任をとって、生徒会の役員を辞めた。
後悔はしていない。
二人で過ごす心安らぐ時間が、私にとっては大切だから。